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建設業2026.10.16執筆:社会保険労務士 岩田裕生読了 約10分

建設業の36協定と、時間外労働の上限規制——2024年4月からのルールと、小さな会社がまずやること

この記事の要点
・2024年4月1日から、建設業にも残業(時間外労働)の上限ができた。原則は月45時間・年360時間。会社の規模による例外はない
・忙しい時期のための「特別条項」を結んでも、年720時間以内、月100時間未満(休日労働を含む)、2〜6か月の平均80時間以内(休日労働を含む)、月45時間を超えるのは年6回まで
・災害の復旧・復興の工事に限り、「月100時間未満」と「2〜6か月平均80時間以内」は適用されない。年720時間と年6回は適用される
・会社に集まって資材を積み込んでから現場へ向かう時間、作業前の朝礼や準備体操は、労働時間に当たると解されている
・小さな会社がまずやるのは、36協定を結んで届け出ること、毎日の始業と終業の時刻を記録すること、集合と移動のルールを決めること
社会保険労務士 岩田裕生
社会保険労務士 岩田裕生 元・病院総務課長、現役の就労継続支援A型事業所管理部長。この記事のテーマは、無料相談(30分)で具体的にお話しできます。 無料相談を申し込む →

「うちは職人が数人だけ。36協定は要るのか」「現場までの移動は、残業に入るのか」。2024年4月から、建設業にも残業時間の上限ができました。従業員が数人の会社も対象です。この記事では、労働局の資料をもとに、上限の中身、労働時間の考え方、従業員の少ない会社がまずやることを、順にまとめます。

2024年4月から、建設業にも残業の上限ができました

残業時間の上限(時間外労働の上限規制)は、一般の会社では2019年4月(中小企業は2020年4月)に始まりました。建設業はこれまで適用が猶予されていましたが、2024年4月1日から適用されています。

対象になるのは、次の事業です。

  • 土木・建築など、工作物の建設、改造、修理、解体などの事業(現場の仕事)
  • 主な事業が建設業である会社の、本社・支店・営業所など(事務や営業の人も対象です)
  • 建設現場で交通誘導をする警備の事業

なお、ダンプカーや生コン車の運転手は「自動車の運転の業務」に当たり、別の上限(特別条項で年960時間など)があります。この記事では扱いません。

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上限の中身——原則は月45時間・年360時間

まず前提です。働いてもらえる時間は、原則として1日8時間・週40時間まで(法定労働時間)。休日は、毎週少なくとも1日です(法定休日)。これを超えて働いてもらうには、会社と従業員の代表とで「36(サブロク)協定」を結び、労働基準監督署に届け出る必要があります。届け出ずに残業をさせると、法律違反になります。

36協定を結んでも、残業できる時間には上限があります。

原則:時間外労働は、月45時間・年360時間までです。1年単位の変形労働時間制を使っている会社では、月42時間・年320時間までです。

特別条項:臨時的な特別の事情があるときに限り、原則を超えることができます。その場合も、次の4つを守ります。

  • 時間外労働は、年720時間以内
  • 時間外労働と休日労働の合計は、月100時間未満
  • 時間外労働と休日労働の合計は、2〜6か月の平均がどれも80時間以内
  • 月45時間を超えてよいのは、年6回まで

気をつけたい点が2つあります。

  • 休日労働も足して数えます。月100時間と2〜6か月平均80時間は、時間外労働と休日労働の合計です。たとえば時間外労働44時間と休日労働56時間なら、合計100時間で法律違反になります。特別条項を結んでいない会社も同じです。
  • 「2〜6か月平均」は、毎月確かめます。その月を含む直前の2か月、3か月、4か月、5か月、6か月の平均が、どれも80時間以内である必要があります。

上限を超えて働かせた場合や、36協定を届け出ずに残業させた場合は、6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金の対象になります(労働基準法第119条)。また、月60時間を超える時間外労働の割増賃金率は、2023年4月から中小企業も50%以上です。

災害の復旧・復興の工事は、一部が適用されません

建設業だけの特例です。災害の復旧・復興の事業に限り、次の2つは適用されません(労働基準法第139条第1項)。

  • 時間外労働と休日労働の合計が、月100時間未満
  • 時間外労働と休日労働の合計の、2〜6か月平均が80時間以内

一方で、「年720時間以内」と「月45時間を超えてよいのは年6回まで」は適用されます。

対象は、災害で被害を受けた道路や鉄道の復旧、仮設住宅や復興支援道路の建設など、災害からの復旧・復興を目的として発注を受けた工事です。国や自治体との災害協定にもとづく復旧の工事も含まれます(業界団体が協定を結んでいて、会社自身は当事者でない場合も含みます)。

この特例は、36協定を結ぶ時点で、災害の復旧・復興の工事に入る見込みがあることが前提です。見込みがある会社は、届出の様式が変わります(特別条項なしは様式第9号の3の2、特別条項付きは様式第9号の3の3)。見込みがない会社は、様式第9号(特別条項付きは様式第9号の2)です。

これとは別に、災害など避けることのできない事情で臨時に必要なときは、労働基準監督署長の許可を受けて(急ぐときは事後に届け出て)、36協定の範囲を超えて働いてもらうことができます(労働基準法第33条第1項)。どちらの場合も、割増賃金の支払いは必要です。

移動時間・朝礼・待機——どこからが労働時間か

労働時間とは、会社の指揮命令の下にある時間です。会社がはっきり指示した場合だけでなく、指示はなくても事実上そうせざるを得ない場合(黙示の指示)も含みます。この考え方は、業種によって変わりません。

労働局の資料と厚生労働省のQ&Aでは、建設業でよくある場面を次のように整理しています。最終的には、一つひとつの事情で判断されます。

労働時間に当たると解される例

  • 社用車に乗り合って現場へ行くよう、会社が指示している
  • 移動の前に、会社で資材の積み込みをするよう指示している
  • 戻った後に、道具の清掃や資材の整理をするよう指示している
  • 移動の車の中で、上司と打ち合わせをしている
  • 作業前の朝礼、作業前の準備体操、作業後の掃除
  • 参加が義務になっている新規入場者教育、KYミーティング
  • 指示があればすぐに作業に入ることを求められ、自由に離れられない待機(手待ち時間)

労働時間に当たらないと解される例

  • 現場への直行・直帰が自由で、従業員どうしが自分たちで集合時刻や運転する人を決めて乗り合っている
  • 呼び出しがまれで、自宅で食事や入浴をしたり、外出したりすることも特に制限されていない自宅待機

現場の作業日報だけで時間を数えていると、朝の積み込みや移動の時間が抜けていることがあります。奈良労働局の資料にも、積み込みや移動の時間が給料の計算に入っていない、という働く人からの相談事例が載っています。

従業員の少ない下請の会社が、まずやること

  1. 36協定を結んで、労働基準監督署に届け出る。事業場(本社・営業所など)ごとに結びます。従業員の過半数で作る労働組合がなければ、従業員の過半数を代表する人を、投票や挙手などで選びます。会社が指名した人や、会社の意向で選ばれた人は認められません。協定では「1日」「1か月」「1年」の残業時間の上限と、1年の数え始めの日(起算日)を決めます。36協定で残業させることができる期間は1年間なので、毎年、期間が切れる前に結び直して届け出ます。
  2. 月45時間を超えそうな月があるなら、特別条項を付ける。理由はできるだけ具体的に書きます。「業務の都合上必要な場合」のような、いつでも当てはまる書き方は認められません。長く働く人の健康を守る措置(医師による面接指導、勤務の間の休息時間の確保など)も決めます。
  3. 毎日の始業と終業の時刻を記録する。原則は、タイムカードやICカードなどの客観的な記録です。自己申告にする場合は、実際の時間を正しく申告するよう本人に説明し、記録と実態がずれていないかを確かめます。
  4. 集合・積み込み・移動のルールを決めて伝える。会社に集まるのか、現場に直行してよいのか。積み込みは誰が、いつするのか。決めたルールに合わせて、時間を記録します。
  5. 月末に、一人ずつ残業時間を確かめる。月45時間を超えた回数(年6回まで)、休日労働を足した月の合計(100時間未満)、2〜6か月の平均(80時間以内)の3つです。月80時間を超えて働き、疲れがたまっている人から申し出があれば、医師による面接指導が必要です(労働安全衛生法第66条の8)。従業員50人未満の会社は、地域産業保健センターで無料で利用できます。
  6. 工期に無理がないか、元請と早めに相談する。2025年12月に全面施行された改正建設業法で、著しく短い工期での契約は、注文する側だけでなく、受ける側にも禁止されました。週休2日がとれない工期のまま受けると、残業の上限を守ることが難しくなります。

労働時間の管理や36協定の書き方は、各都道府県の働き方改革推進支援センター(無料)や、労働基準監督署でも相談できます。

根拠資料

当事務所では、建設業の会社の労務顧問もお受けしています。36協定の作成と届出、労働時間の記録と残業時間の管理のご相談、労災保険・雇用保険・社会保険の手続きを、まとめてご依頼いただけます。料金は無料相談(30分・オンライン可)でご案内します。建設業の許可や経営事項審査の申請は行政書士の業務のため、提携先をご紹介します。

よくあるご質問

建設業の36協定で、残業の上限は何時間ですか?
原則として、時間外労働は月45時間・年360時間までです。特別条項を結んでも、時間外労働は年720時間以内、時間外労働と休日労働の合計は月100時間未満で2〜6か月の平均が80時間以内、月45時間を超えてよいのは年6回までです(2024年4月1日から)。
従業員が数人の会社でも、36協定は必要ですか?
1日8時間・週40時間を超えて働いてもらう場合や、法定休日に働いてもらう場合は、人数にかかわらず必要です。協定を結び、労働基準監督署に届け出てから、その範囲で残業してもらうことができます。
会社から現場までの移動時間は、労働時間ですか?
一つひとつの事情で判断されます。乗り合いでの移動や、移動前の資材の積み込みを会社が指示している場合、車の中で打ち合わせをしている場合は、労働時間に当たると解されています。直行・直帰が自由で、従業員どうしが任意に乗り合っている場合は、当たらないと解されています。
災害の復旧工事にも、残業の上限はありますか?
災害の復旧・復興の事業に限り、「月100時間未満」と「2〜6か月平均80時間以内」は適用されません。「年720時間以内」と「月45時間を超えてよいのは年6回まで」は適用されます。36協定を結ぶ時点で工事に入る見込みがあり、専用の様式(様式第9号の3の2・第9号の3の3)で届け出ていることが前提です。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案への適用を保証するものではありません。制度の内容は2026年10月16日時点の公表資料に基づきます。届出・指導・調査の結果は行政機関の判断によるもので、結果を保証するものではありません。
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