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医療2026.10.06執筆:社会保険労務士 岩田裕生読了 約10分

個別指導でよく指摘される事項——厚生局の公表資料から、クリニックが日頃から整えておくこと

この記事の要点
・個別指導は、保険診療の質の向上と適正化のための指導。施設基準を確認する適時調査とは目的が違う
・対象は、情報提供があった医療機関や、集団的個別指導の翌年度も高点数の医療機関など。新規指定の医療機関には新規個別指導がある
・指導後の措置は「概ね妥当」「経過観察」「再指導」「要監査」の4区分。不適切な請求は自主返還を求められる
・北海道厚生局の令和7年度の資料では、指導した医療機関の62.4%が診療録・傷病名、40.8%が掲示・届出で指摘を受けていた
・対策の中心は、診療の都度の記載、傷病名の整理、医師と請求事務の連携、掲示と届出の更新
社会保険労務士 岩田裕生
社会保険労務士 岩田裕生 元・病院総務課長、現役の就労継続支援A型事業所管理部長。この記事のテーマは、無料相談(30分)で具体的にお話しできます。 無料相談を申し込む →

「個別指導の通知が届いた」「どんなことを指摘されるのか知っておきたい」——クリニックからいただくご相談です。筆者は病院の総務課長として、近畿厚生局の個別指導への対応と、指摘を受けた後の運用の見直しを担当してきました。この記事では、厚生局が公表している指摘事項をもとに、クリニックで指摘されやすい点と日頃の対策を整理します。

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個別指導とは

個別指導は、健康保険法第73条にもとづき、保険診療の質の向上と適正化を目的として行われる指導です。進め方は、厚生労働省保険局長の通知「保険医療機関等及び保険医等の指導及び監査について」に付いている指導大綱で定められています(最終改正 令和8年3月30日)。

  • 集団指導:講習などの方式で行う
  • 集団的個別指導:レセプトの平均点数が高い医療機関を集めて行う
  • 個別指導:医療機関ごとに、診療録などをもとに面接懇談方式で行う

よく混同される適時調査は、届け出た施設基準を実際に満たしているかを確認する調査で、目的が違います。適時調査については「適時調査への備え」で解説しています。

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対象になる医療機関

個別指導の対象は、選定委員会で選ばれます。指導大綱などでは、主に次のような医療機関が挙げられています。

  • 支払基金・保険者・被保険者などから、診療内容や請求について情報提供があった
  • 前回の個別指導で「再指導」や「経過観察」となり、改善が見られない
  • 集団的個別指導の翌年度も、レセプトの平均点数が高い
  • 正当な理由なく集団的個別指導を受けなかった

集団的個別指導の対象は、レセプト1件あたりの平均点数が都道府県の平均の1.2倍(診療所)を超え、かつ類型区分ごとに上位おおむね8%に入る医療機関です。新たに保険医療機関に指定されたクリニックには、指定からおおむね6か月を経過したころに新規個別指導が行われます(東北厚生局の資料による)。

当日までの流れと、指導後の措置

  • 日時・場所・出席者・準備する書類などが、事前に文書で通知されます
  • 近畿厚生局の場合、「保険医療機関(医科)の現況」を、通知に書かれた期限までに府県の事務所へメールで提出します
  • 開設者と管理者が出席し、必要に応じて保険医や請求事務の担当者も出席を求められます
  • 原則として指導月より前の連続した2か月分のレセプトをもとに、診療録などの関係書類を見ながら面接懇談方式で行われます
  • 終了時に口頭で結果が説明され、後日、文書で通知されます。改善報告書の提出が求められます

指導後の措置は「概ね妥当」「経過観察」「再指導」「要監査」の4区分です。不適切な請求が見つかった場合は、自己点検のうえ自主的に返還します。正当な理由なく個別指導を受けない場合は、監査の対象になります。

通知が何日前に届くか、対象の患者がいつ知らされるかは、公開されている国の資料には定めがありません。地域の医師会が会員向けに案内している場合があるので、所属の医師会に確認してください。

参考までに、令和6年度に全国で行われた個別指導は2,494件、新規個別指導は5,989件でした。指導・適時調査・監査で返還を求めた額は約48.5億円で、そのうち指導によるものは約17.3億円です(厚生労働省、令和8年1月29日公表)。

クリニックでよく指摘される15項目

東北厚生局(令和7年度)、北海道厚生局(令和7年度)、中国四国厚生局(令和6年度)が公表している医科の指摘事項から、クリニックで起こりやすいものを選びました。対策の欄は、資料の記載と筆者の実務経験から整理したものです。

区分指摘の要旨日頃の対策
診療録医師による日々の診療内容の記載が乏しい、または無い。傷病手当金の意見書を交付したのに、診療録の意見欄が空欄診療の都度、症状・所見・治療計画を記載する
診療録指導の直前に、対象患者の診療録へ追記していた。確定後の追記で、追記した人と日時が分からない指導が決まった後に追記しない。追記は記録が残る方法で行う
傷病名診断の根拠のない傷病名、「疑い」と確定の取り違え、査定を避けるための病名、長く残った「疑い」や急性の病名、転帰や左右の記載漏れ必要な説明は摘要欄や症状詳記で行う。治療が終わった病名は削除せず転帰を書く
初診料・再診料同じ慢性疾患の診療中なのに初診料を算定。検査結果を聞きに来ただけの日に再診料を算定。電話再診を要件外で算定再診に付随する一連の行為は再診料に含まれることを、受付と請求事務で共有する
外来管理加算患者から聴いたことや診察所見の要点の記載が無い、または不十分患者ごとの状態に応じた記載をする(定型文で済ませない)
特定疾患療養管理料管理内容の要点の記載が無い。対象外の主病で算定。医師の指示ではなく請求事務の判断で算定医師と請求事務が連携し、レセプト提出前に医師が自ら点検する
悪性腫瘍特異物質治療管理料確定診断の前の患者に算定。検査結果や治療計画の要点が未記載疑いの段階で行った検査は、本来の検査項目で算定する
生活習慣病管理料(Ⅱ)療養計画書を作っていない、または写しを診療録に添付していない計画書の作成と添付を、会計の前に確認する手順にする
診療情報提供料(Ⅰ)紹介元への受診を伴わない返事に算定。必要な欄が空欄。写しを添付していない定められた様式に準じた文書で作成し、写しを残す
在宅医療訪問診療の時刻と場所が未記載。署名した同意書が無い。在宅自己注射・酸素療法・CPAPの指示の根拠や指導内容が未記載記載すべき項目を一覧にして、訪問のたびに確認する
検査悪性腫瘍が強く疑われるとはいえない患者への腫瘍マーカー。段階を踏まない検査や、必要以上の回数。超音波検査の所見の記録が無い患者ごとに必要最小限の回数で行い、所見を記録する
投薬・注射主病でない患者に特定疾患処方管理加算を算定。ビタミン剤の必要性の記載が無い。適応外の投与承認された効能・用法を確認し、必要性を記載する
電子カルテの管理医療情報システムの安全管理ガイドライン(第6.0版)に準拠していない。IDの共用、代行入力の確定(承認)漏れ、退職者のIDの放置運用管理規程を整え、職員の入退職のたびにIDを見直す
一部負担金受け取るべき人から受け取っていない(例として従業員とその家族)。計算の誤り。算定が変わった後の差額の精算漏れ職員・家族の受診の扱いを規程で決め、差額は返金または徴収する
掲示・届出施設基準の院内掲示やウェブサイトへの掲載が無い。保険医の異動や診療時間・診療科の変更を届け出ていない職員の異動や院内の変更があるたびに、届出と掲示を同時に見直す

北海道厚生局の令和7年度の資料(指導した医療機関125)では、指導した医療機関の62.4%が「診療録・傷病名」について、40.8%が「掲示・届出」について指摘を受けていました。区分ごとの集計では、再診料は指摘15件のうち13件、特定疾患療養管理料は53件のうち37件、診療情報提供料(Ⅰ)は22件のうち19件で返還となっています。

なお、これらの資料は令和6年度改定の算定ルールのもとでの指摘です。令和8年度改定で名称が変わったり廃止されたりした加算(医療情報取得加算、時間外対応加算など)が含まれている点に注意してください。

労務・届出の管理とつながる指摘

指摘の多くは診療と請求の問題ですが、次の3つは職員の管理や届出の管理と直結しています。社会保険労務士の立場から見ても、日頃の仕組みで防げる部分です。

  • 電子カルテのID:退職した職員のIDが残っている、複数の職員で1つのIDを使っている。入職・退職の手続きとIDの発行・削除を同じ流れにすると防げます
  • 職員・家族の一部負担金:職員や家族の受診で窓口負担を受け取っていない。福利厚生として扱いたい場合も、保険診療の一部負担金とは分けて、規程で決めておく必要があります
  • 保険医の異動・診療時間の変更の届出:医師の入退職や診療時間の変更が、厚生局に届け出られていない。採用・退職と届出を一つの予定表で管理すると漏れません

指導の通知が届いたら

  • 通知に書かれた期限と、提出する書類(近畿厚生局では「保険医療機関(医科)の現況」)を確認する
  • 出席者(開設者・管理者、必要に応じて保険医や請求事務の担当者)の予定を確保する
  • 診療録への後からの追記はしない。追記していたこと自体が指摘の対象になります
  • 掲示・届出・電子カルテのIDの管理など、診療録以外で確認できるものを先に点検する
  • 所属の医師会に、地域での進め方を確認する

根拠資料

当事務所のオンライン事務長・事務長代行では、個別指導・適時調査の前に、掲示と届出、職員の入退職とIDの管理、職員・家族の受診の扱いなど、診療録以外で確認できる点を一緒に点検します。施設基準の届出と年間の予定の管理もお受けします。診療録の記載や請求の判断は医師・医療機関が行うもので、当事務所が代わりに行うことはできません。まずは無料相談へ。

よくあるご質問

個別指導と適時調査は何が違いますか?
個別指導は、保険診療の質の向上と適正化を目的に、診療録などをもとに面接懇談方式で行う指導です。適時調査は、届け出た施設基準を実際に満たしているかを確認する調査です。
個別指導の後、どのような結果になりますか?
指導大綱では、指導後の措置は「概ね妥当」「経過観察」「再指導」「要監査」の4区分です。不適切な請求が見つかった場合は、自己点検のうえ自主的に返還します。
新しく開業したクリニックも個別指導を受けますか?
新たに保険医療機関に指定された医療機関には、新規個別指導があります。東北厚生局の資料では、指定からおおむね6か月を経過した医療機関が対象とされています。
指導の通知は何日前に届きますか?
公開されている国の資料には、何日前に届くかの定めはありません。事前に文書で日時・場所・準備する書類などが通知されます。地域の進め方は、所属の医師会にも確認してください。

院長先生に渡せる1枚「個別指導に備える 日頃の点検表」(A4・PDF・無料)

個別指導に備える 日頃の点検表の見本

診療録・請求・電子カルテのID・掲示と届出など、指摘の多い点を医師と事務に分けて1枚にまとめました。通知が届いたときの手順も載せています。

送信すると、次の画面でその場で点検表を開けます。ご入力のメールアドレスには、この資料について岩田から1回だけご連絡します。定期的なお知らせはお送りしません。取り扱いはプライバシーポリシーのとおりです。

このような院は、ご相談ください

  • 個別指導の通知が来た/次に備えておきたい
  • カルテの記載や算定の根拠を、院内で点検する仕組みがない
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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案への適用を保証するものではありません。制度の内容は2026年10月6日時点の公表資料に基づきます。届出・指導・調査の結果は行政機関の判断によるもので、結果を保証するものではありません。
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