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医療2026.10.06執筆:社会保険労務士 岩田裕生読了 約11分

クリニック(無床診療所)の施設基準——届出のルール、令和8年度改定で確認すること、毎年の予定

この記事の要点
・施設基準は、地方厚生局に届け出て受理されてから算定できる。月末までに受理されれば翌月1日から、月の最初の開庁日に受理されれば当月1日から
・令和8年度改定は令和8年6月1日から適用。医療DX推進体制整備加算と医療情報取得加算は廃止され、電子的診療情報連携体制整備加算が新設された(届出が必要)
・機能強化加算と在宅療養支援診療所は業務継続計画(BCP)が要件に加わり、続ける場合は令和9年6月1日までに届出し直しが必要
・届け出た事項は院内掲示に加え、原則としてウェブサイトにも掲載する
・毎年8月1日現在の状況を自己点検し、8月31日までに定例報告を出す
社会保険労務士 岩田裕生
社会保険労務士 岩田裕生 元・病院総務課長、現役の就労継続支援A型事業所管理部長。この記事のテーマは、無料相談(30分)で具体的にお話しできます。 無料相談を申し込む →

「どの加算を届け出ているのか、院長も事務も正確に把握していない」「改定のたびに何をすればよいのか分からない」——クリニックからよくいただくご相談です。筆者は病院の総務課長として、施設基準の管理と近畿厚生局への届出を担当してきました。この記事では、無床診療所が押さえておくべき施設基準の手続きを、厚生労働省の通知と近畿厚生局の案内にもとづいて整理します。

施設基準と、届出が必要な理由

診療報酬の加算や管理料の中には、人員・設備・体制などの基準(施設基準)を満たし、地方厚生局に届け出て受理された場合に限って算定できるものがあります。手続きは、厚生労働省の2つの通知(基本診療料・特掲診療料の「施設基準等及びその届出に関する手続きの取扱いについて」、令和8年3月5日 保医発0305第7号・第8号)に定められています。

  • 届け出るのは開設者です。所在地を管轄する地方厚生(支)局長に、届出書と添付書類を1通提出し、写しを院内で保管します
  • 兵庫県のクリニックの提出先は近畿厚生局 兵庫事務所、大阪府のクリニックは近畿厚生局 指導監査課です
  • 提出は郵送か電子申請(保険医療機関等電子申請・届出等システム)です。FAXでは受け付けていません
  • 受理通知書は送られてきません。受理の状況は近畿厚生局のページで確認します

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いつから算定できるか

  • 各月の末日までに受理されれば、翌月1日から算定できます
  • 月の最初の開庁日に受理されれば、その月の1日から算定できます
  • 特に定めがある場合を除き、届出の前1か月の実績が必要です
  • 審査は原則2週間以内、遅くともおおむね1か月以内です(書類の補正にかかる期間を除く)

また、届出の前6か月以内に不正・不当な届出をした場合、掲示事項等告示に違反した場合、監査で処分を受けた場合は、受理されません。

月をまたぐと算定の開始が1か月遅れます。新しく届け出るときは、前の月のうちに書類を整え、月の最初の開庁日までに届くようにしておくと確実です。

令和8年度改定で、クリニックが確認すること

令和8年度の診療報酬改定は、令和8年6月1日から適用されています。施設基準の通知も同じ日から新しくなり、前の通知は5月31日で廃止されました。無床診療所に関係の深い変更は次のとおりです。

項目変わったことクリニックがすること
電子的診療情報連携体制整備加算1〜3医療DX推進体制整備加算と医療情報取得加算が廃止され、新設された。共通の要件は、オンライン請求、明細書の無償交付、オンライン資格確認、マイナ保険証の利用率30%以上(算定月の3か月前の実績。前月・前々月でも可)など新設のため届出が必要。利用率は毎月確認する
時間外対応体制加算1〜4時間外対応加算から名称が変わった。体制の区分は1〜4令和8年5月31日に算定していた場合は、届出し直しは不要
機能強化加算業務継続計画(BCP)の策定が要件に加わった令和8年3月31日時点で届け出ていれば、令和9年5月31日までは満たすものとみなされる。続ける場合はBCPを整え、令和9年6月1日までに届出し直し
在宅療養支援診療所業務継続計画(BCP)の策定などが要件に加わった令和8年3月31日時点で届け出ていて、令和9年6月1日以降も続ける場合は届出し直し
生活習慣病管理料本体は届出不要。充実管理加算1〜3(旧 外来データ提出加算を再編)は届出が必要で、データの提出が条件旧加算を届け出ていた場合、令和9年3月31日までは一部の要件を満たすものとみなされる

厚生労働省は、届出漏れを防ぐための「医科診療所用 施設基準届出チェックリスト」を公表しています(令和8年4月20日 事務連絡)。ただし、チェックリストを提出しても届出にはなりません。

院内掲示とウェブサイトへの掲載

地方厚生局に届け出た事項は、院内に掲示するだけでなく、原則としてウェブサイトにも掲載することになっています(保険医療機関及び保険医療養担当規則 第2条の6第2項、令和8年3月27日 保医発0327第6号)。明細書の発行状況や保険外の負担も同じ扱いです。自院で管理するホームページを持たない医療機関は例外とされています。

施設基準の中には、掲示やウェブへの掲載そのものが要件になっているものもあります。

  • 電子的診療情報連携体制整備加算:院内掲示とウェブサイトへの掲載
  • 機能強化加算:院内とホームページ等への掲示、持ち帰り用の文書
  • 地域包括診療加算・地域包括診療料:院内掲示とウェブサイトへの掲載
  • 情報通信機器を用いた診療(オンライン診療):初診で向精神薬を処方しないことなどをウェブサイトに掲示
  • 外来感染対策向上加算:院内掲示と、発熱患者を受け入れる旨の公表

ホームページの更新を後回しにすると、届出はしているのに掲載がない状態になりがちです。届出や変更のたびに、院内掲示とホームページを同時に直す手順にしておくと漏れません。

無床診療所でよく届け出る施設基準

施設基準主な要件の要点
情報通信機器を用いた診療オンライン診療の指針に沿った体制、対面診療を提供できる体制(難しい場合は他院との連携)、医療広告ガイドラインの遵守、向精神薬を処方するときの重複投薬の確認
機能強化加算地域包括診療加算や在宅療養支援診療所などの届出と一定の実績、かかりつけ医機能としての対応、業務継続計画(BCP)
外来感染対策向上加算専任の院内感染管理者、マニュアル、職員研修(年2回程度)、カンファレンス(年2回)と訓練(年1回)への参加、発熱患者などの動線の分離
電子的診療情報連携体制整備加算オンライン請求、明細書の無償交付、オンライン資格確認、マイナ保険証の利用率30%以上など(加算1・2は電子処方箋・電子カルテの要件も)
時間外対応体制加算診療時間外の電話などに対応できる体制。区分1〜4で体制の程度が違う。院内掲示・文書配布・診察券への記載などで周知
明細書発行体制等加算オンライン請求などと、詳細な明細書の無償交付。届出は不要で、院内掲示が要件
地域包括診療加算慢性疾患の研修を修了した担当医、介護保険への対応、24時間の往診または連絡体制など
在宅療養支援診療所24時間の連絡・往診・訪問看護の体制、緊急入院先の確保、業務継続計画(BCP)など
外来・在宅ベースアップ評価料(Ⅰ)対象職員の賃上げへの充当、職員への周知と就業規則の周知、毎年8月の実績報告・中間報告の提出
婦人科特定疾患治療管理料婦人科診療の経験が十分な常勤医が1名以上で、その医師が器質性月経困難症の研修(通算6時間以上)を修了

要件の全文は通知の別添で確認してください。届出の様式は、近畿厚生局の「施設基準等の届出について」のページから入手できます。

要件を満たさなくなったとき

  • 届出の内容と違う事情が生じたら、開設者が遅滞なく変更の届出をします(特掲診療料は、事情が生じた月の翌月に)
  • 変更後の点数は、届出の翌月から算定します(月の最初の開庁日に受理されれば当月1日から)
  • 常勤の配置や面積のように、月単位の計算を使わない要件は、満たさなくなったその月のうちに速やかに届け出ます
  • 要件を満たせず続けられないときは、辞退届を出します

なお、看護要員の数などについて「暦月で1か月以内の1割以内の一時的な変動」を認める規定がありますが、これは入院に関する基準の規定です。外来の施設基準について、同じような許容の規定は通知では確認できません。

筆者の経験では、要件を外れるきっかけの多くは、担当の職員の退職や研修の受け漏れです。採用・退職の手続きと、施設基準の確認を同じ担当でつなげておくと、気づくのが早くなります。

毎年の予定(年間スケジュール)

時期やること
毎月マイナ保険証の利用率の確認(電子的診療情報連携体制整備加算)。職員の入退職で要件が変わっていないかの確認
年2回・年1回外来感染対策向上加算の職員研修・カンファレンス(年2回)、訓練(年1回)
8月1日現在 → 8月31日まで定例報告(自己点検と報告)
毎年8月ベースアップ評価料の賃金改善実績報告書(前年度分)と賃金改善中間報告書(当年度分)
令和8年10月14日必着9月30日までの経過措置があった施設基準の届出し直し(外来腫瘍化学療法診療料1など。近畿厚生局の案内による)
令和9年3月31日生活習慣病管理料の充実管理加算(旧 外来データ提出加算から移行した分)の経過措置の終わり
令和9年6月1日まで機能強化加算・在宅療養支援診療所の届出し直し(BCPを整えたうえで、続ける場合)
届出・変更のたび院内掲示とウェブサイトの掲載内容を更新

8月の定例報告

施設基準を届け出ている医療機関は、毎年8月1日現在で施設基準に適合しているかを確認し、その結果を報告します。令和8年度の近畿厚生局の案内では、期限は8月31日、提出は郵送・メール・電子申請のいずれかでした。

無床診療所は、自己点検で要件を満たしていれば次の手順に進み、満たしていない施設基準があれば報告様式と辞退届を提出します。届出の内容によっては、在宅時医学総合管理料・オンライン診療・ベースアップ評価料などの個別の報告書も提出します。対象や様式は年度ごとに変わることがあるため、毎年7月ごろに近畿厚生局の案内を確認してください。

不備が見つかった場合

厚生局が訪問して行う適時調査は、当分の間、原則として病院が対象です。診療所は、8月の定例報告(自己点検)で施設基準の状況を確認する位置づけになっています。

調査などで施設基準を満たしていないことが分かり、変更や辞退を求められた場合は、要件を満たさなくなった月の翌月以降に算定した分が返還の対象になります(前回の適時調査以降が基準)。指導を受けても改善されない場合は、弁明の機会を経て届出が無効とされることもあります。適時調査の流れは「適時調査への備え」で解説しています。

根拠資料

当事務所のオンライン事務長・事務長代行では、届け出ている施設基準の一覧と年間の予定表をつくり、届出・変更届・定例報告の期限前にこちらからご案内します。施設基準の届出は、健康保険法に基づく手続きとして当事務所が作成します。医療法に基づく届出や許認可は、提携行政書士と分担して進めます。まずは無料相談へ。

よくあるご質問

施設基準の届出を出し忘れていた場合、さかのぼって算定できますか?
原則として、受理された月の翌月(月の最初の開庁日に受理された場合は当月1日)から算定します。さかのぼって算定できるのは、経過措置などで特に定めがある場合に限られます。気づいた時点で、早めに届け出てください。
医療DX推進体制整備加算を算定していました。何か手続きは必要ですか?
令和8年度改定で、医療DX推進体制整備加算と医療情報取得加算は廃止されました。新設された電子的診療情報連携体制整備加算を算定するには、新たに届出が必要です。
定例報告は、届け出ている施設基準のすべてについて出すのですか?
近畿厚生局の令和8年度の案内では、無床診療所は自己点検で要件を満たしていない施設基準がある場合に報告様式と辞退届を出し、届出の内容に応じて在宅時医学総合管理料やベースアップ評価料などの個別の報告書を提出する流れでした。対象は年度ごとに確認してください。
ホームページがない場合も、届出事項の掲載は必要ですか?
自院で管理するホームページを持たない医療機関は、ウェブサイトへの掲載の例外とされています。院内掲示は必要です。
施設基準の届出を社会保険労務士に頼めますか?
当事務所では、健康保険法に基づく手続きとして施設基準の届出の作成・提出をお受けしています。医療法に基づく開設・変更の届出や許認可は、提携行政書士と分担します。

このような院は、ご相談ください

  • 施設基準を届け出たまま、要件を満たしているか点検していない
  • 職員の入れ替わりで、人員や研修の要件が足りているか不安
  • 定例報告や適時調査の前に、何をそろえればよいか分からない

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※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案への適用を保証するものではありません。制度の内容は2026年10月6日時点の公表資料に基づきます。届出・指導・調査の結果は行政機関の判断によるもので、結果を保証するものではありません。
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